【よみもの】一度手にしたらきっと長いお付き合いに。飴色に輝くモダンな漆器 | 樂園百貨店

一度手にしたらきっと長いお付き合いに。飴色に輝くモダンな漆器

2019.11.15

GOODS

沖縄の伝統工芸の一つである琉球漆器でありながら、暮らしの中で普段使いできる『あさと木漆工房』の器や生活雑貨。木の美しさが際立つように漆を塗り重ね、それが活きるようにデザインはシンプルに、使い心地はとびきり良く。あさと木漆工房から生まれるものは、丁寧な手仕事の積み重ねと、暮らしに寄り添い、長く使ってもらえるようにとの想いが詰まっています。

漆の魅力と木の美しさを知ってほしくて

光を受けて艶やかに輝くカップや器を手に取ると、驚くほど軽く、すっと手に馴染む心地良さ。那覇市繁多川に工房を構える『あさと木漆工房』の安里昌樹さんが作るのは、一見しただけでは漆器とは思えないモダンな雰囲気。一般的にイメージされる黒や朱塗りの琉球漆器とはずいぶん違うように見えます。安里さんが技法は守りつつも、伝統的なイメージとは異なるものを作るようになったのは、なぜだったのでしょう。

「漆について学んでいる時に、いわゆる伝統的な“塗り”の完成品は技術的にも素晴らしいし綺麗だとは思ったんですが、自分が作りたいものではないと感じて。もっと普段の暮らしの中で使えるものが作りたいと思ったんです。じゃあどうしようと考えた時に、自分はやっぱり木が好きで、木目の素晴らしさなどをもっと知ってほしいという気持ちが強かった。そこに漆も使いたかったから、塗りのように木を完全に覆ってしまうのではなく、木目を際立たせることができる『拭き漆(ふきうるし)』という技法を選んだんです」

拭き漆は、漆を塗った後に専用の紙で拭き、残った漆を硬化させるという工程を数回繰り返す技法のこと。紙で余分な漆を拭き取ることで、木目が美しく透け、艶のある仕上がりになり、なんとも質感が良く、使い込んだような飴色になるのです。

自然界で生まれたもの、沖縄で生まれたものを使いたい

そもそも安里さんが木漆工房を立ち上げようと思ったのは、2011年に発生した3.11東日本大震災がきっかけだったといいます。それまでは会社員として環境を調査する仕事に携わっていたものの、震災を機に、これからは本当にやりたいことをやろうと真剣に考え、出した答えは工芸の道でした。そして、やりたいことを考えるほど、自分の作るものは自然界から生まれたものだけを使いたいという気持ちが強くなったといいます。

「木も漆もすごいんですよ。例えば杢(モク。木の模様のこと)は、光の当たり具合でキラキラしたりするんです。それはもう言葉では言い表せない綺麗さ。僕は県産の木材を使っていますが、イタジイやセンダン、クスノキとどれも杢がそれぞれ違って、その個性をどんなものに活かすかを考えるのはとても面白い。漆は、言ってみればただの樹液なんですが、アルカリにも酸性にも強くて、塗るとそのものをとても丈夫にしてくれる。それにとても綺麗な色が出せるし、使うほどにその奥深さが感じられる。人の手が加えられていない、自然が生み出したものは本当にすごいと思うんです」

漆にすっかり魅了されてしまったと安里さんは言いますが、漆は取るのも使うのも大変なもの。1本の木から取れる漆はせいぜい牛乳瓶1本分。しかも人の手で少しずつ掻き取る方法でしか取ることができないので、とても手間がかかる。作り手が実際に使う時も、例えば塗料などとはまったく違い、塗った後に硬化させるのに時間がかかるなど、多くの時間と手間が必要に。でも、それだけの手間をかけても、やはり漆にしか出せない魅力があるのだと、安里さんは話します。

日々の暮らしの中で長く使えるものを

「作るものを考える時に、だいたい思いつくのは手間がかかるデザインなんです。もうこういう考えを誰かに直してほしい」と笑って話す安里さん。作業工程が増えるデザインだったり、入り組んだ構造で細かな作業を多く必要としたりと、手間はかかるけれど見た目や使い勝手を考えると、どうしてもそうなってしまうとのこと。しかも安里さんの作業の細かさ、仕上げへのこだわりは相当なもの。削り跡やちょっとした傷も、とことん研いで滑らかにしないと気が済まない。自分が納得いくものであることはもちろん、プロが見ても「いい仕事をしているな」と思われるものを作りたい。その気持ちが丁寧な仕事につながっているのです。

「手にしてくれた方が笑顔になれたり、こころ落ち着ける。
そんな、日々の暮らしに永く寄り添う木と漆の暮らしの道具たちをご紹介します。」

安里さんの名刺には、この一言が添えられています。
木も漆も、長く使えるのがいいところ。その素材がいきるように、いつ見ても邪魔にならないシンプルなデザインと、使い心地の良さを考える。いつも食卓で使われて、子どもや孫にも受け継いで使ってもらえるものをと、安里さんは一つひとつの作業を積み重ねています。

*お知らせ
あさと木漆工房の新作が樂園百貨店に入荷しました。冬のギフトにぴったりのコーヒーカップやお皿、カトラリーなどを揃えています。店頭にてぜひ手に取ってご覧ください。

あさと木漆工房(あさともくしっこうぼう)

漆職人の安里昌樹さんが2014年に地元である那覇市繁多川にて立ち上げ。シンプルで飽きのこない、長く使えるデザインの器や生活雑貨を、沖縄県産の木材を使い、拭き漆の技法で制作する。受注制作のほか、イベントや展示会での販売も行う。長く使ってもらうことを念頭に、購入後のメンテナンスにも対応している。