ココナッツ、黒糖、麩から生まれた新しい沖縄のお菓子、COKOFU(ココフ)
2020.04.02
PEOPLE沖縄料理の定番の一つに「フーチャンプルー」があるなど、沖縄は全国的に見ても「麩」の消費量が多い県。食卓ではお馴染みですが、“麩を使ったお菓子”は、なかなか珍しいもの。サクッと軽い食べ心地に、甘くていい香りのCOKOFU(ココフ)のお菓子は、沖縄の新たなお土産にもぴったり。浦添市港川の人気の外人住宅エリアに、仲間とともにお店を立ち上げた新垣伸也さんにお話をうかがいました。
贈答用にも、お茶の間でも愛される、麩を使った沖縄のお菓子を作りたい
― COKOFUを作るきっかけを教えていただけますか?
もともとは製薬会社の営業をしていて、その前は食品会社の提案営業をしていました。漠然と「お店をやってみたい」という気持ちはあったんですが、具体的な計画があったわけではなかったんです。でも、今一緒にお店をやっているパートナーから「沖縄のお土産にもなるお菓子を作りたい」との相談がきっかけになって、仲間3人でCOKOFUを立ち上げました。
― なぜ麩を使ったお菓子を作ってみようと思ったのでしょう?
きっかけは二つありまして、一つは、たまたま県外の麩を使ったお菓子を食べる機会があっておいしいと思ったこと。もう一つは、お店を一緒にやっているパートナーの友人にヴィーガンの方がいて、その方たちから「沖縄ではヴィーガン向けに買えるお土産がまったくない」という話を聞いたことでした。「沖縄では麩は一般的な食材だし、動物性のものを使わなければヴィーガンや動物性アレルギーの人たちにも喜んでもらえるお菓子が作れるんじゃないか」と思い、試しに作ってみようと思ったんです。
でも、実際にやってみたら大変なことばかり(笑)。まず、麩を使ったお菓子自体が珍しいので、レシピがまったくない状態。だからすべて手探りで始めました。
COKOFUには、一番最初に作った、京都の丸麩を使った商品の「ここふ」のほか、麩をスティック状にしてチョコレートをコーティングした「チョコレートスティック」や、車麩を一口サイズにカットし、黒糖やチョコレートをコーティングした「黒糖かりん麩」などがあります。どのお菓子にもココナッツミルクを入れたオリジナルの黒蜜をベースに使っているんですが、この黒蜜を完成させるのも、それを麩に絡ませて食感良く仕上げるのもとても大変でした。
麩は、料理を使う時は必ず水を吸わせてから使います。でも、お菓子作りでは水分を含んでしまってはべちょべちょになって食感が悪くなってしまう。黒蜜を、麩の表面にとどまるくらいの粘度で作って、中はカリッとさせたままの食感にできるまでに、かなりの時間がかかりましたね。
モットーは、「すべての人に喜んでいただけるお菓子を作りたい」
― 素材へのこだわりについて教えてください。
COKOFUという名前はココナッツ、黒糖、麩の3つの言葉の頭を取ったんです。もともと、からだにいいものを作りたいと思っていたので、素材は自分たちが良いと思えるものを選んでいました。ただ、原材料がかかるので価格的に厳しい部分はあるんですが、やっぱりそこはこだわらないと、と思って。
それに、ヴィーガンのように動物性のものを食べない人や、乳製品や卵のアレルギーがある人など、今は食に関して多様なニーズがいろいろとあります。そうした状況でも、できるだけすべての人が喜んで食べられるものを作りたい、というのは当初から僕たちが目指したことでした。
ただ、ヴィーガン対応や健康志向というと、イメージとして「物足りないんじゃないか」「食べ応えがあまりないんじゃないか」と思う人もいると思うんです。僕自身は肉も食べるし、いわゆる“がっつり”の食べ物は好きです。でも、そんな自分だからこそ、食に関して一つの考え方に偏ることなく、一般的な好みを考慮した商品作りができるんじゃないかと思っているんです。
― お客さんからの反応で、印象に残っていることはありますか?
僕はこの仕事を始める前から、沖縄は贈り物をする機会が多い「贈答文化」が根づいている地域だと感じていたんですね。お店に来るのも「最初はもらって、おいしかったから、今度は自分で買いに来たよ」という方が割と多いんです。それで最近は結婚式の引き出物に使っていただくことも増えてきました。
2020年8月でお店を始めて3年目になりますが、お客さんには来ていただいているものの、認知度はまだまだだと思っています。ゆくゆくは、沖縄を代表するお土産や贈り物にしたいと思っていますが、それと同時に「沖縄にこんなにいいものがあるんだよ」ということも伝えたい気持ちがあって。麩はカロリーは低いけれど、たんぱく質がとても豊富なんです。そうした素材の魅力を、お菓子という意外性のある商品にすることでPRできたらいいなと思いますね。