チャイの魅力を沖縄から発信するCHAI NEED US(チャイニダス)
2023.10.03
FOODインドなどでよく飲まれ、紅茶と濃厚なミルク、そしてスパイスの香りが相まって、ほかのどのドリンクとも違うおいしさが味わえるイメージのあるチャイですが、日常的に飲んでいる人はどのくらいいるのでしょう。日本、そして沖縄ではあまり馴染みがないからこそ、そのおいしさを伝えたいとお店を始めたCHAI NEED US(チャイニダス)の金子峻也さん、ミナさん夫妻に、チャイの魅力を教えていただきました。
チャイという飲み物の面白さに惹かれて
埼玉出身の峻也さんと沖縄出身のミナさんは以前、飲食の職場で一緒に働いていたことをきっかけに結婚し、いつかは二人でお店を持ちたいと話していた中で、あるときから気になるようになったのが、チャイだったといいます。
「飲食の仕事をしているといろんな飲み物を飲む機会があるんですが、その中で印象的だったのがチャイだったんですね。面白くてどこか不思議だなって興味をそそられて。気になるようになってからは、どこかの飲食店に行ってメニューにチャイがあったらとりあえず頼むようになって。そうしているうちに、『チャイの専門店はどうだろう』と考えるようになりました」と話す峻也さん。
それまでは飲むだけだったのが、お店を始めると決めてからはとにかく勉強と研究を重ねたけれど、最初はそもそもチャイってどんな飲み物なんだろう?というところから始まったとのこと。
「もともとチャイというのは、インドなどではお茶という言葉の総称というか、お茶全般を指す言葉らしいんです。でも、その解釈をそのまま僕らの店に持ってきてしまうと、なんのお店なのかよくわからなくなってしまうし、僕らがお店で出すメニューを考えるときにも困ってしまったんですね。それなので、この店の定義としては、『チャイというのはスパイス入りミルクティーのことです』とさせてもらったんです」。
チャイ専門店として基本となる考え方を決めてからは、自分たちが思う理想の味を見つけるために、峻也さんとミナさんはたくさんのことを試したと言います。チャイに使われるのは紅茶と牛乳、砂糖、そしてスパイス。材料はこの4つだけですが、良くも悪くもどの材料も産地や種類が多く、それぞれ個性があるので、一つ材料を変えれば味も香りもがらりと変わってしまい、そこがチャイの面白さや奥深さであるものの、理想の味にたどり着くのは本当に大変だったとのこと。
しかも、スパイスは驚くほどたくさんの種類があり、それぞれ香りがまったく違うもの。金子さんたちはバランスを大切にしながら、チャイに詳しくなくても「これはおいしい」と思ってもらえる一杯にするために、最終的に6種類のスパイスをセレクトし、お店の一番の基本となる「クラッシックチャイ」を誕生させました。これでチャイのおいしさを知ってもらったら、その後は自分好みに“追いスパイス”をすることも可能。「もっとスパイスが強めの方がいいな」と感じたら、スパイスの量を多めにすることもできるのです。
「まずはチャイを知って、そのおいしさをわかってもらったら、その後はアレンジの面白さを知ってもらう、という風にチャイを楽しんでもらえるといいなと思っています」。チャイの面白さは、アレンジの幅がとても広いということ。CHAI NEED USは、その奥深い世界の入り口になれたらという想いもあるのだといいます。
沖縄だから生まれた「シーサーブレンド」
チャイのおいしさを知ってもらうと同時に、沖縄だからこそ味わえる、沖縄の素材をいかしたチャイを作りたいというのも金子さん達がずっと思っていたことの一つ。そこで生まれたのが「シーサーブレンド」でした。
「ベースにさんぴん茶を使っているんですが、沖縄でさんぴん茶というと、身近すぎて特別な感じがないお茶という感じなのかなと思うんですね。でも県外から来た僕にしてみると、この香りの良さにはすごくポテンシャルを感じて。スパイスと合わせても香りが負けないし、うまく調和します。沖縄のシナモンと呼ばれるカラキも使っていますが、一般的なシナモンよりやわらかな香りなのも良くて。お客さんからも人気ですね」。
爽やかで華やかな香りのさんぴん茶をベースにしたシーサーブレンドは、カラキのほか、月桃やピパーチなどのスパイスをブレンド。さっぱりとした口当たりの中に沖縄の素材が香る、沖縄らしいチャイという仕上がり。普段飲むにも、県外の友人への贈り物にもおすすめしたいチャイです。
金子さんはチャイを楽しんでもらう上で、販売用のものを茶葉にすることにもこだわったといます。そこにはチャイのいれ方がていねいに書かれた説明書も同封されています。
「チャイは、レシピ通りに茶葉からきちんと煮出して作れば必ずおいしくなるんです。でもそれを最初から自己流でやってしまったり、分量をアバウトにしてしまうと、せっかくのおいしさが再現できなくなってしまう。自宅で、普段からチャイを楽しんでもらうためには、どうしてもその作り方を守ってもらいたいと思ったので、分量などは大さじ何杯というのではなく、すべてグラム単位にしています。鍋を用意して、茶葉を煮出してという、少し手間とも思われる作業かもしれませんが、それも含めてチャイの楽しさだと思っています」
日々の生活の中でチャイを味わう時間を持ってもらうこと。それが広がり、沖縄にチャイ専門店があることをたくさんの人たちに知ってもらうこと。そのために、金子さんたちはおいしい一杯を今も追求し続けています。