【よみもの】作品を通してつくり手に触れられる「沖縄」の豊かさ | 樂園百貨店

作品を通してつくり手に触れられる「沖縄」の豊かさ

2017.09.12

OKINAWA

樂園百貨店に並ぶ「沖縄のいいモノ」のセレクトを行う、那覇市にあるギャラリーショップ『RENEMIA』オーナーの金城博之さん。

賑やかな国際通りに近いにも関わらず、ここだけゆっくりと時間が進んでいるかのような穏やかな空気に満ちた店内には「身近なところから素敵な気持ちになれること」をコンセプトに、クラフトやアート、アクセサリー、雑貨など、地元作家を中心にセレクトした商品が並びます。

日本のなかでも独特な風土や歴史を背景にもつ沖縄のものづくりについて、また樂園百貨店にかける想いについて、沖縄出身である金城さんにお話を伺いました。

【沖縄独特の風土を背景に表現される自由さ、伸びやかさ】

ー今回、樂園百貨店で取り扱う「沖縄のいいもの」をセレクトしていただいていますが、地元出身の金城さんから見て、沖縄という地域のものづくりやデザインについて、なにか感じるところはありますか?

そうですね、地図で日本を見ると北海道から九州へと列島が続いていく中で、沖縄だけプツンと海を隔てているので自然や文化の違いが色濃く、県外から来た方は驚かれることが多いです。

沖縄は「職人」というよりは「作家」が多い島だと感じていて、沖縄独特の風土の中で個々がのびのびと作品を作っている印象です。作品にも、その伸びやかさや自由さが表現されています。作家本人たちは何も意識していないと思いますが、手にとるとドキッとさせられるような魅力を感じます。

また作品としての魅力も勿論なのですが、最終的にはそれが「人」につながっていくのかな、と思っていて。

たとえば東京だと、ものづくりの作家さんに出会うことはなかなか難しいと思うのですが、沖縄ではショップとかでけっこうすぐに会えてしまうんですね。商品を手にとりながら、直接作家さんの顔を見て会話ができる、それもまた大きな魅力ではないでしょうか。

ー金城さんは那覇市ご出身ですが、東京にも長くいらしたんですよね?

はい。東京で学生時代と社会人を経験した後、ヨーロッパへ留学してそれから沖縄に戻ってきました。

やはり、いちど外に出た影響は大きかったですね。もともと地元が好きではあったのですが、帰ってきて改めて見ると、やはり沖縄は他とは違う個性を感じるとても豊かな島だと感じました。樂園百貨店でも、その部分にフォーカスできればと思っています。

先日、私の店を訪れたお客さんが商品を手に取り「沖縄にはこういうシンプルなものは無いと思っていたけど、素敵なものがあるんですね」と感動してくださって。そういうときは、やはり嬉しいですね。伝統的なものだけではなく、こんなふうに暮らしに寄り添う佇まいのものもあるんだな、と知ってもらえたらと思います。

ー近年、若い作家さんも増えていますね。本土から移住してきた方が弟子入りすることも多いと聞きます。

そうですね、おそらく沖縄が琉球の時代からもっている「受け入れることに寛容な資質」が関わっているのではないかと思います。

それに、少し前だと沖縄は、海外や本土に対して基本的に憧れみたいなものがあったと思いますが、今は沖縄からもじゅうぶん魅力的なものが発信できると感じています。

【しっかりと気持ちが分かち合える商品を】

ー樂園百貨店のブランドづくりをおこなうなかで、なにか意識されていることはありますか?

実は今回、樂園百貨店の「沖縄のいいモノ」のプロデュースとバイイングをしていくチームの中で、僕だけが地元なんです。とても光栄なことですし、外からの視点と内からの視点とを、うまく織り交ぜていけたら良いなと思います。

ー参考にしたお店や、コンセプトってあるのでしょうか?

うーん、昔はそういうのを狙ってやっていたかもしれませんが、最近はあまり考えなくなりましたね。

感性のままに、ストレートにセレクトしています。もちろん、いろいろ制約があるなかで、ですけど。自分なりに、ネイティブな目線で感じた沖縄のエッセンスを組み込んでいければと考えています。

周りがグローバルになればなるほど、根っこの部分がどんどん研ぎ澄まされていくものではないでしょうか。

ー樂園百貨店で、実際に取りあつかう予定の商品について教えてください。

私の店で取りあつかっているものや、デザインの部分で関わってきたものが中心となりますが、しっかり気持ちが分かち合えているものを中心に選んでいます。

ただ商品をぽんと目の前にして選ぶのではなく、作家さんたちの人柄などを背景に感じつつ、きちんと向き合うこと。そこを大事にセレクトしていきたいですね。

【樂園百貨店を訪れることで見えてくる、今の沖縄】

ーこれから樂園百貨店は、沖縄でどのような存在になっていくと思われますか?

沖縄を訪れたら必ず立ち寄る場所になってほしいです。

たとえば美術館や博物館に行けばその土地が見えてくるように、樂園百貨店に行けば沖縄が見えてくる。そういう場所になるといいですね。

百貨店としての本来の「目利き」を取り戻すというか。そういうスタンスで樂園百貨店をスタートできたらいいなと思います。リウボウは県内唯一の百貨店なので、やはり沖縄の人たちは特別な想いや期待値みたいなものがあって、ファンもたくさんいるんですよね。その期待にしっかり応えて、さらに期待を超えていきたいですね。

そして、リウボウがランドマークになることで派生効果が生まれ、周辺地域にも人の流れができて……。そんなふうに街の活性化にもつながっていくことを期待しています。

金城博之

1972年那覇市生まれ。明星大学日本文化学部を卒業後、株式会社エフインク(東京)にて勤務。2001年〜渡英。帰国後、那覇市牧志にてデザインオフィス「think of」設立。2013年「RENEMIA」オープン。沖縄を中心とした工芸やアート、食品、暮らしにまつわることをメインに企画展や販売をおこなっている。